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イラン在住4年間の写真集とイランを舞台にした小説です。


by EldamaPersia

月の砂漠(体験記)その1

日本人の砂漠への憧れというのは、あの有名な「月の砂漠」という歌の影響を受けているのかも知れません。砂漠とロマンチックなイメージとを結び付けられるのはあの歌くらいしか思い浮かばないからです。砂漠を行く二人の男女しかいないからロマンチックなら砂漠は背景でしかないのですけどね。

砂漠には確かに二人を邪魔するものは何もないようです。昼は暑いから夜に移動するのがいい、それには満月は格好の照明になりますね。人間活動の入る余地のない砂漠、生活に伴う煩わしさの欠片もないような砂漠、だから魅力を感じるのかも知れません。

ところで恥ずかしながら、私は砂漠に対する知識がほとんどありませんでした。今回初めて砂漠を訪れることで驚くような発見がたくさんありました。もともと理科系人間の私ですからもうロマンチックな叙情的な作文なんて書きようもなくなってしまいました。

そもそも私は砂漠というのは平野だと思っていたのです。地図上では平野のように描かれているのでそういう印象を持ってしまったのだと思います。ですから砂漠は乾燥した気候の平野に存在するものだと思っていました。

砂漠に向かう車の中で、私は砂漠と砂漠でないところの境目がどうなっているのだろうかって考えていました。
1.降雨量が主要な原因だとすると気候は急激には変わらないだろうから、10km程度のスケールで徐々に砂漠になっているのではなかろうか。この場合、しばらくの時間砂漠のようなところを四輪駆動の自動車で走り続けるのではないだろうか。
2.地質の影響を受けて、砂漠になりやすいところで砂漠化が進むのかも知れないから、境目はもう少し明瞭でせいぜい1kmくらいの境目を持っているのかも知れない。これだと砂漠のようなところを延々と走ることはないことになる。

カシャーンの町を抜けて1時間も走ったでしょうか、周りの景色は依然としてイランのどこにも見られる土漠が広がっています。西部劇で見られるような乾燥に強い草が生えているだけの光景です。その草の背丈が低く均一になって来たことから砂漠が近いというような予感は持つことはできました。

やがて我々が目にしたのは駱駝の群れでした。野生の駱駝というものではなく、誰かが放牧しているのでしょう。人の姿はまったく見られません。30頭くらいの駱駝の群れでした。幸い道路の近くに群れを見つけられたので写真に収めることができました。何かの看板にいる二頭は訪問者に愛想を振舞っているのではなく、体が痒いので看板にこすり付けているのです。それで気持ちのよさそうな表情を見せてくれているのですね。
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私をがっかりさせたことの一つにどこまでも続いている道があります。もちろん道といっても舗装されたものではありませんが、それでもちゃんと道があって、道なき道を進むんじゃないかと考えていた私の期待は見事に裏切られてしまいました。もっとも、目指す砂漠に到着するまでに出会った車はたったの1台でしたけどもね。

カシャーンの町から2時間程度と聞いていたですが、町を出て1時間半を経過してもちゃんと道らしい道がありました。砂漠に到着するのにはまだまだ時間がかかるのかも知れないなぁと心配してしまったくらいです。

カシャーンの町の東にはイラン最大の砂漠(ほとんどが土漠ですが)キャビール砂漠が広がっています。500kmくらいのスケールだと思います。その東側、カシャーンの近くは少し低くなっているところがあり、イランの国全体の地形の地図では湖のような表示になっている部分があります。実はここには塩が集まってきていて、冬と春の少しの降水の時期を除くと塩の湖になっています。
by EldamaPersia | 2007-01-21 07:57